総会の翌週、前任の会計から紙袋を1つ受け取る。中身は通帳と印鑑、ノートの出納帳、輪ゴムで留めた領収書の束。その場では開けずに持ち帰り、家で広げると、封筒に現金2,000円が入っている。このお金は出納帳のどこに書いてあるのか。通帳の名義は、前の会長のままです。

引き継ぎで確かめるのは20項目です。渡す前に6つ、当日に8つ、受け取った後に6つ。当日その場で合わせる数字は、通帳残高・手元現金・決算書の次年度繰越金の3つだけです。同じ表は、1年後に自分が次の人へ渡すときにもそのまま使えます。

自治会の会計引き継ぎで確かめるのは20項目。渡す前・当日・受け取った後に分けます

市の手引きにも、会計の1年分の仕事を10区分で並べたチェックシートがあります(東松島市 p.26-27、一宮市 p.5)。ただ、引き継ぎに当たる項目は数行です。その数行を、時期ごとに広げたのが次の表です。

No時期確認項目手引きの記載
1渡す前手元の現金をすべて口座に預け入れた東松島市 p.6・p.25/一宮市 p.8
2渡す前出納帳を引き渡し日まで記帳し、最後の行に残高を書いた東松島市 p.27(帳簿の締め切り)
3渡す前総会で承認された決算書と監査報告がそろっている東松島市 p.25
4渡す前会計のルール・自治会独自の決まりをメモにした東松島市 p.25
5渡す前任期中に問題になったことと改善点を書き出した東松島市 p.25/一宮市 p.8
6渡す前未納の会費と、まだ払っていない支払いを書き出した(運営者の提案)
7当日当日に通帳を記帳し、残高が変わっていないことを見た東松島市 p.6
8当日通帳残高+手元現金が決算書の次年度繰越金と一致した(上の判定欄)東松島市 p.6/八王子市 p.9
9当日通帳(口座すべて)と届出印を受け取った東松島市 p.6・p.26
10当日キャッシュカードがあれば受け取った東松島市 p.7
11当日引き渡し書類一覧の書類をすべて受け取った東松島市 p.6
12当日備品・財産を実物で確かめた八王子市 p.9/東松島市 p.27
13当日パソコンの帳簿なら、ファイルとパスワードを受け取った東松島市 p.26(パスワード)
14当日確かめた結果に、渡す人・受け取る人(・立会人)が署名した(運営者の提案)
15受け取った後口座の名義が前会長・前会計なら、金融機関で変更した東松島市 p.6-7/一宮市 p.6
16受け取った後キャッシュカードの暗証番号を変えた東松島市 p.7
17受け取った後通帳と印鑑を別の人が保管する形にした東松島市 p.7/座間市/一宮市 p.3
18受け取った後補助金・交付金の申請時期と要綱を確かめた東松島市 p.6/一宮市 p.6
19受け取った後古い帳簿の保管場所と、何年分残すかを決めた座間市(5 年を目途)
20受け取った後自治会独自のルールを出納帳の表紙裏などに書き写した東松島市 p.6(メモ欄)

6番と14番は手引きに記載が無く、私たちが加えました。テンプレートではこれに記入欄が付き、No / 時期 / 確認項目 / 確認欄 / 引き渡し日 / 確認者 / 手引きの記載 / 備考 の8列になります。

3つの手引きが引き継ぎで挙げる項目を並べると、重なりが見えます。

項目東松島市 会計編一宮市 会計事務の手引八王子市 運営ハンドブック
現金を0にして引き継ぐp.6・p.25「現金残高0の状態で」p.8「口座へ入金」記載なし
当日記帳・残高の一致p.6「引継ぎ当日に記帳」記載なしp.9「金額が合っているか」
口座名義の変更p.6-7「前会長、前会計担当であれば変更」p.6「議事録等」で証明p.9「必要な場合は口座名義を変更」
通帳と印鑑を別々にp.3・p.7p.3p.9
ルール・問題点を文書でp.25「メモ等の文書で」p.8「文書により」p.4「専用のファイル」
備品・財産の確認p.27(備品リスト)記載なしp.9「必ず確認」

3つすべてに出てくるのは、口座の名義、通帳と印鑑を分けること、ルールや記録を文書で渡すこと。「記載なし」は不要という意味ではなく、その手引きが触れていないだけです。

渡す前に前任者がやるのは、現金を口座に入れて帳簿を締めること

「現金は引継ぎ前に全て口座に預け入れた上で、現金残高0の状態で引き継ぐことが望ましいです」(東松島市 p.6・p.25)。一宮市の手引きp.8も同じ趣旨です。

数字で追ってみます。収支報告書の記事と同じ、30世帯・会費5,000円の自治会です。3月31日の時点で、通帳残高は25,930円、手元現金は2,000円。足した27,930円が、総会で承認された決算書の次年度繰越金でした。

渡す前に、前任者がこの2,000円を口座へ入れます。すると通帳は27,930円、手元現金は0円。出納帳にも預け入れの行を、現金側と預金側の両方に書きます。そのうえで出納帳を引き渡し日まで書き、最後の行に残高を書いて締めます(2番)。預け入れの書き方は出納帳の記事の「現金と預金の混在」の節と同じです。冒頭の封筒の2,000円は、この一手が抜けた状態です。

受け取る側は、引き渡しの日を決める連絡のときに、現金の預け入れとルールのメモを先に頼んでおくと当日に間に合います。決算書と監査報告がそろっているか(3番)も、このとき確かめておきます。

6番の未納会費と未払いの一覧は、手引きには無い私たちの提案です。先の例でも、自治会費は1世帯分5,000円が未納のまま年度を越えています。紙に残っていないと、新しい会計は集め忘れに気づけません。

当日に並べる数字は3つ。通帳残高、手元現金、次年度繰越金

当日は記帳して残高が変わっていないこと、そして「通帳残高が決算書の金額と一致していること」を確かめます(東松島市 p.6、八王子市 p.9)。

並べるのは、記帳したばかりの通帳残高、手元現金、決算書の次年度繰越金です。先の例なら、通帳27,930円、現金0円、繰越金27,930円。27,930+0=27,930で一致します。

気をつけたいのは日付のずれです。決算書は3月31日時点、通帳は引き渡し日時点の数字です。その間にお金が動けば、2つは直接は合いません。

たとえば4月10日に、総会資料の印刷代1,500円を口座から払っていたとします。通帳は26,430円になり、決算書とは1,500円ずれます。出納帳の4月の行を見て、27,930−1,500=26,430と説明できれば受け取ってかまいません。テンプレートの判定欄は「差額 -1,500 円」と出るので、備考に「4/10 印刷代 1,500」と書き添えます。

3つの数字の説明がつくまで、受け取りを終えないでください。

説明のつかない差額が出たら、その場で金額を書き留め、前任者と一緒に出納帳を開きます。探す場所は、預け入れと引き出しの書き漏れ、科目別合計の取りこぼし、未納分の二重計上の3か所です。詳しくは収支報告書の記事の「次年度繰越金」の節にあります。それでも分からなければ、会長に伝えてください。

立ち会いについては、確かめた3つの手引きに記載がありません。私たちは、監事か会長に同席してもらい、3つの数字を一緒に見てもらうことをおすすめします。後で「合っていたはず」と食い違ったときに、確かめられる人が増えます。14番の署名も同じ理由です。

受け取る物は、一覧に書いて数えます

紙袋の中身が通帳と出納帳と領収書だけなら、足りない物があります。座間市のマニュアルは、最低限必要な帳票として7つを挙げています。伝票綴り、会計出納帳、現金出納帳、預金(貯金)通帳、仕訳帳、補助簿、財産目録または備品台帳です。同じマニュアルは、仕訳帳と補助簿は収支が少なければ省いてよいとしています。

テンプレートの「引き渡し書類一覧」には16行を入れてあります。座間市の帳票のうち出納帳・通帳・領収書の綴り・備品台帳の4つと、届出印、規約、議事録、補助金の要綱、メモ類などです。列は 書類・物品 / 数量 / 何年度分 / 保管場所 / 渡した / 受け取った / 備考 の7つ。渡す人が数量と保管場所を先に書き、受け取る人が当日に「受け取った」を埋めます。何年度分は前年度分を基本に、規約と備品台帳は最新のものを受け取ります。

古い帳簿を何年分残すかは、座間市のマニュアルが「会計年度終了後5年を目途」としています。座間市の目安で、法律で一律に決まっているものではありません。

備品や財産は、備品台帳を持って実物を見ます。八王子市のハンドブックは、引き継ぎのときに必ず確かめるよう求めています(p.9)。

帳簿をパソコンで付けていたなら、ファイルとパスワードを受け取ります。東松島市のチェックシートp.26には、パソコンで帳簿を付けるならパスワードを設定する、という項目があります。

口座の名義と印鑑は、受け取ったあと早めに片づける

名義が前会長や前会計なら変えます。金融機関によっては規約や議事録を求められ、時間がかかる場合があります(東松島市 p.6-7)。一宮市の手引きは、総会の議事録で証明に代えられることがあるとしています(p.6)。

一例として、ゆうちょ銀行の案内を引きます。団体名義の口座で代表者が替わり、新代表者が窓口へ行く場合の共通書類です。表記はゆうちょ銀行のページのままにしてあります。

必要なもの
現在のお届け印(紛失している場合は不要)
新たなお届け印
代表者異動および所在地変更の事実が確認できる書類(規約、議事録等)
口座に新たに設定する新代表者様の本人確認書類
「お取引目的等の確認のお願い(人格なき社団のお客さま)」

総合口座なら、通帳や届書、団体の規約なども要ります。地方銀行や信用金庫、農協は求める書類が違うので、窓口へ行く前に電話で聞いてください。

市区町村の認可を受けて法人になった自治会(認可地縁団体)は、別の手続きもあります。八王子市のハンドブックp.13は、代表者が変わればその都度市への届出が必要と書いています。

通帳と印鑑は、別の人が持ちます。4つの手引きがそろって書いています(東松島市 p.3、座間市、一宮市 p.3、八王子市 p.9)。一人では出し入れできない形にしておけば、自分が疑われることも防げます。

キャッシュカードがあるなら、役員交代のタイミングで暗証番号を変えるのが望ましいとされています(東松島市 p.7)。カードの無い自治会は、10番と16番を「該当なし」にしてください。

数字にならない引き継ぎは、紙に書いて渡してもらう

「引継ぎは口頭で行うことが多いかと思いますが、このような細やかな部分などはメモ等の文書で引き継ぐことが望ましいです」(東松島市 p.25)。玄関先で聞いた話は、書き留めなければ次の人には渡せません。

抜けやすいのが補助金と交付金です。要綱を受け取ったら、申請の締め切りと保管場所を手帳に写しておきます。申請書は複数の役員で確認しながら書く、と一宮市の手引きp.6にあります。

20番の由来は、東松島市 p.6 にある「自治会独自のルール等」の記入欄です。敬老会の記念品にかける上限額のような、規約に無い取り決めを書きます。私たちは、帳簿を開くたびに目に入る出納帳の表紙裏に書き写すことをおすすめします。

福岡市の「自治会・町内会各種様式集」には、Word形式の「役員引継ぎ書」があります。自分の市にも様式が無いか、担当窓口に聞いてみてください。

1年後に渡す側になったとき、困らないように今年から残すもの

今年受け取った人は、来年は渡す人になります。八王子市のハンドブックp.4は、役職ごとに専用のファイルを作り、資料や記録を新任の役員に渡すよう勧めています。今年の紙袋を、そのまま来年のファイルにすれば足ります。チェックリストも、今年使ったExcelを複製して年度を書き換えれば来年に使えます。

私たちが勧めているのは、任期中に困ったことを月に1行だけ書いておくことです。1年で12行になり、手引きのいう「問題となった事柄、改善点」がほぼ埋まります(東松島市 p.25)。

自治会_会計引き継ぎチェックリスト.xlsx の見本。1 枚目のシートの上部自治会_会計引き継ぎチェックリスト.xlsxExcel 2016 以降、および Google スプレッドシートで開けます。シートは「チェックリスト」「引き渡し書類一覧」「使い方」の3枚です。テンプレートをダウンロード

チェックリストのC2・F2・H2には自治会名・年度・引き渡し日を、C3・F3・H3には渡す人・受け取る人・立会人を入れます。当日はC6〜C8に通帳残高・手元現金・次年度繰越金を入れ、C9が「一致」になるか、差額の理由を備考に書きます。確認欄は「済」「未」「該当なし」から選ぶと、残りの項目数が下に出ます。A4縦1枚に収まります。

引き継ぎの日が決まったら、このチェックリストを2部印刷し、紙袋と一緒に持っていってください。渡す人と受け取る人が1部ずつ持ちます。

帳簿と決算書が別々の紙で残っていると、引き継ぎのたびに数字を突き合わせ直すことになります。出納帳の入力から収支報告書までを、1つながりで残しておきたい。私たちが「自治会総合支援サービス」を作ったのは、そのためです。

よくある質問

引き継ぎの日に、通帳残高と決算書の金額が合いませんでした。どうすればよいですか。 受け取りを終えず、差額を書き留めて、引き渡し日までの出し入れで説明できるかを出納帳で見ます。説明できなければ前任者と一緒に出納帳と領収書を確かめ、会長に伝えてください。

口座の名義変更は必ず必要ですか。 名義が前会長や前会計の個人名なら変えます(東松島市のハンドブック)。金融機関によって規約や議事録を求められるので、先に電話で必要書類を聞いてください。

通帳と印鑑は、両方とも会計が持つものですか。 分けるのが原則で、東松島市は「通帳は会計、印鑑は自治会長等」としています。

古い帳簿や領収書は、何年分受け取ればよいですか。 座間市のマニュアルは「会計年度終了後5年を目途」としていますが、法律で一律に決まっているものではありません。規約に保存年限があればそれに従い、無ければ前任者と相談して決めます。

引き継ぎに立会人は要りますか。 確認した手引きに定めは見当たりませんでした。私たちは監事か会長の同席をおすすめします(理由は本文の当日の節)。

出典

  • 東松島市『地区自治会ハンドブック【会計編】』令和4年度版(PDF)。p.3・p.6-7・p.25-27。
  • 一宮市『町内会 会計事務の手引』2026年版(PDF)。p.3・p.5・p.6・p.8。
  • 八王子市町会自治会連合会『町会・自治会運営ハンドブック』(PDF)。p.4・p.9・p.13。
  • 座間市自治会総連合会『自治会出納帳マニュアル』(PDF)。通帳と印鑑の保管、帳票と保存期間の目安。
  • ゆうちょ銀行 よくあるご質問「団体(人格なき社団)名義の口座の代表者異動、所在地変更およびお届け印の変更がありました。手続きには、どのような書類が必要ですか。」(ページ)。新代表者が来店する場合の共通書類と、総合口座・振替口座の追加書類。
  • 福岡市『自治会・町内会各種様式集』(ページ)。「役員引継ぎ書」の様式。

この記事はAIが下書きし、運営者が内容を確認して公開しています。制度や手続きは自治体や団体の規約によって異なります。お住まいの市区町村で自治会を担当する窓口の手引きも、合わせて確認してください。