3月31日で出納帳を締めた。最後の行の残高が出て、通帳とも合っている。ひと安心したところに、会長から電話が入る。「総会の資料、今週中にお願いします」。机の上には、前任者が残した去年の紙が1枚。科目が縦に並び、数字の列が2つある。あの2列が何なのか、まだ分かっていない。
2列のうち左が予算額、右が決算額です。収支報告書は、出納帳を科目ごとに合計し、総会で決めた予算と横に並べたA4の1枚。作る順番は4つだけです。出納帳を3月31日で締める、科目別に合計する、予算書から予算額を写す、繰越金を出す。出納帳の書き方そのものは自治会の出納帳の書き方で説明しました。ここから先は、締めたあとの話です。
収支報告書は、予算といくら違ったかを科目ごとに並べた1枚です
まず名前から片づけます。収支報告書、収支決算書、会計報告書、決算報告。呼び方は違っても、中身は同じ1枚です。前任者の紙に書いてある名前に揃えれば、それで足ります。
次に列です。ここで手が止まりやすいのは、手引きによって列名が違うからです。3つの手引きの記載例を並べてみます。
| 手引き | 収入・支出の表の列 | 差を表す列 | 末尾の集計 |
|---|---|---|---|
| 東松島市 会計編14ページ | 科目 / 予算額 / 決算額 / 差異 / 説明 | 差異 | 収入合計 − 支出合計 = 残余金 |
| 美濃加茂市 決算書(案)記載例 | 科目 / 予算額 / 収入済額(支出済額)/ 予算比 / 摘要 | 予算比 | 収入総額 / 支出総額 / 次年度繰越額 |
| 座間市 決算書の作成(例) | 科目 / 本年度実績 / 本年度予算 / 予算比 / 主な内訳(項目)/ 内訳金額 / 備考 | 予算比 | 残金 = 収入 − 支出 |
どれが正しいという話ではありません。共通しているのは、科目・予算・決算・差・集計の5つです。この5つさえ入っていれば、どの列名でも総会は通ります。前任者が残した去年の用紙の列に合わせるのが最優先。去年の紙が無ければ、この記事の5列(科目 / 予算額 / 決算額 / 増減 / 備考)をそのまま使ってください。
作る順番は4つ。締める、合計する、予算を写す、繰越金を出す
出納帳は3月31日で締めます。最終残高を確かめ、手元の現金と通帳残高が帳簿と合っているかを見ます。合わせ方は出納帳の記事の月末の残高合わせと同じです。
科目別の合計は、出納帳の科目欄が「会費」「事業費」「会議費」と揃っていれば電卓を叩くだけです。揃っていなければ、科目の付け直しから始まります。1年つけてきた科目欄が、そのまま決算の下ごしらえになっていたわけです。
予算額は作り直しません。去年の総会で議決した予算書の数字を、そのまま予算額の列へ写します。座間市自治会総連合会のマニュアルは「予算は想定金額ですが、決算は現実の金額になります」と書いています。想定と現実の差を見せる1枚ですから、想定の側を後から動かしては意味がなくなります。
繰越金は、収入合計から支出合計を引くだけ。あとの節でまとめて扱います。
収入の部は、前年度繰越金を1行目に置く
収入の部の1行目は、前年度からの繰越金です。東松島市・美濃加茂市・座間市の記載例は、いずれも繰越金を収入の科目として並べています。東松島市は収入6項目の最後、美濃加茂市と座間市は1行目に置いています。位置は違っても、収入に入れる点は3つとも共通です。
30世帯・会費5,000円の自治会を例にします。出納帳の記事と同じ団体の、1年後だと思ってください。
| 科目 | 予算額 | 決算額 | 増減 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 前年度繰越金 | 30,000 | 30,000 | 0 | |
| 自治会費 | 150,000 | 145,000 | -5,000 | 5,000円×29世帯(1世帯未納) |
| 補助金 | 40,000 | 40,000 | 0 | |
| 雑収入 | 100 | 30 | -70 | 預金利息 |
| 合計 | 220,100 | 215,030 | -5,070 |
増減は決算額から予算額を引いた数です。自治会費が5,000円足りないのは、1世帯が未納だったからです。この理由を備考に1行書いておくと、総会で「なぜ5,000円少ないのか」と聞かれたその場で答えられます。美濃加茂市の記載例も、会費の摘要欄に「6,000円×51人=306,000円(途中入会1名)」と書き方の手本を示しています。数字ではなく、数字の作り方を書く欄だと考えてください。
支出の部で迷うのは予備費。使わなかったら0のまま残す
支出の部で初めての会計が迷いやすいのが、予備費の行です。予備費とは、急な出費に備えてあらかじめ確保しておくお金です。1年間まったく使わなかった場合、行ごと消したくなります。消しません。決算額を0のまま残し、増減にマイナスで出します。
手引きの記載例も同じです。美濃加茂市の決算書(案)記載例は予備費を予算31,000円・決算0円・予算比マイナス31,000円としています。座間市の決算書の作成(例)も、予備費75,000円が決算0円です。予備費は「使わなかったことを見せる行」だと思っておけば迷いません。
| 科目 | 予算額 | 決算額 | 増減 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 事業費 | 90,000 | 88,200 | -1,800 | |
| 会議費 | 15,000 | 12,600 | -2,400 | |
| 事務経費 | 20,000 | 21,500 | +1,500 | 印刷代の値上がり |
| 協力費 | 30,000 | 30,000 | 0 | |
| 慶弔費 | 20,000 | 10,000 | -10,000 | |
| 什器備品費 | 25,000 | 24,800 | -200 | |
| 予備費 | 20,100 | 0 | -20,100 | |
| 合計 | 220,100 | 187,100 | -33,000 |
この表で増えているのは事務経費だけです。プラスの行は総会で必ず理由を聞かれるので、備考に短く書いておきます。「印刷代の値上がり」で十分です。
科目の名前に決まりはありません。座間市のマニュアルは、支出を12科目(事業費・会議費・事務経費・協力費・維持費・什器備品費・慶弔費・活動補助費・繰出し金・募金支払・雑費・予備費)としています。これは座間市内で揃えるための一覧です。自分の団体の規約と、前年度の収支報告書のほうが優先します。
次年度繰越金 = 収入合計 − 支出合計。通帳と合わなければ総会に出さない
2つの表ができたら、下に3行足します。収入合計、支出合計、次年度繰越金です。
収入合計(決算額)215,030円。支出合計(決算額)187,100円。次年度繰越金 27,930円。引き算はこれだけです。座間市の記載例も同じ形で、収入合計1,042,805円から支出合計941,359円を引いて残金101,446円としています。東松島市の会計編14ページも同じです。収入合計2,004,000円、支出合計1,765,000円、残余金239,000円。「残余金は次年度へ繰り越します」と添えています。名前が繰越金でも残金でも残余金でも、計算は同じです。
ここからが、この1枚でいちばん大事な作業になります。出した27,930円を、実際のお金と突き合わせます。年度末の通帳残高が25,930円、手元現金が2,000円。足すと27,930円で、次年度繰越金と一致しました。
この2つが一致しないまま総会に出すのが、初めての会計にとって最大の事故です。
合わないときは、差額の金額を手がかりに3か所を見ます。1つ目は口座への預け入れと引き出しの記入漏れで、差額がきりのよい数字ならここを疑います。2つ目は科目別合計の取りこぼしで、出納帳の行数と、集計に使った行数を数え直します。3つ目は未納分の二重計上です。原因が分かる前に数字をいじって合わせるのは避けてください。監査で説明できなくなります。
なお予算の側にも検算があります。美濃加茂市の予算書(案)記載例は【ポイント】として「収入と支出の合計が一致するようにします」と書いています。上の例でも、収入予算220,100円と支出予算220,100円が一致しています。予備費は、この一致を作るための調整弁でもあります。
用紙の下に、会長と会計の押印欄、監事の監査報告文を置く
数字が固まったら、用紙の下半分を作ります。入れるのは次の3つです。
- 「以上のとおり、○○年度の決算を報告します」の一文
- 会長と会計の署名押印欄
- 会計を確認する役員である監事の監査報告文
検索で上位に出る記事は、私たちの見る範囲ではここに触れていません。3つの手引きにはどれも実物が載っています。
東松島市の会計編14ページは、監事2名の署名欄の上にこう書いています。「〇〇〇〇自治会規約第〇条に基づき〇〇年度決算(関係帳簿及び証拠書類)を監査した結果、その内容は良好であり適正であることを認めます。」
美濃加茂市の決算書(案)記載例は監事1名の押印で、文言は「令和○年度収入・支出決算について監査を行ったところ関係書類等相違なく、かつ適正に執行されていることを認めます。」座間市の決算書の作成(例)は会計監査2名の押印で、「上記の 年度収入支出決算について、帳簿預金証書類を厳正に監査した結果、適正と認め報告いたします。」となっています。
自分の団体の規約に文言があれば、それを使ってください。無ければ、この3つのどれかに倣えば十分です。監事の人数も、手引きによって1名と2名に分かれています。規約の定めが先です。
監査を受けるのは総会の前です。東松島市のハンドブックは、監査の場に「予算書、決算書、帳簿、領収書、通帳、メモ等」を用意すると書いています。決算書だけ持って行っても、監事は数字を追えません。
法人になっている自治会は、収支報告書のほかに財産目録も要ります
市区町村長の認可を受けて法人になった自治会を、認可地縁団体(にんかちえんだんたい)と呼びます。自治会館の土地や建物を団体の名義で持てるのが利点です。この場合、収支報告書とは別に、法律で作ることを求められる書類があります。
地方自治法第260条の4です。「認可地縁団体は、認可を受ける時及び毎年1月から3月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。」同じ条文にただし書きがあり、事業年度を別に定める団体はその終了時に作ります。作る時期は、横浜市の手引きでは「年度初3か月以内」と案内されています。認可を受けた市区町村の手引きで確かめてください。同じ手引きは、地方自治法の改正で不動産の保有が認可の要件でなくなった後も、財産目録は作る必要があると念を押しています。
監事についても同じ法律に定めがあります。第260条の11は監事を置くことができるとし、第260条の12は監事の職務の第一号に「財産の状況を監査すること」を挙げています。決算の数字だけでなく、財産も見る役です。
認可を受けていない自治会に、この義務は法律上ありません。ただ、自治会館や積立金があるなら、財産の一覧は作っておいたほうが引き継ぎが楽になります。福岡市の様式集は、決算書とは別に「財産調書」と「積立金調書」を配っています。
テンプレートを配り、総会での読み上げ順も1つ決めておく
この記事の5列をそのまま使えるExcelテンプレートを用意しました。収支報告書のシートに、使い方と科目一覧を添えています。
使い始めは3つです。年度と自治会名を上の欄に入れると、表題と会計期間が自動で変わります。科目はあらかじめ入っています。前年度の紙に合わせて書き換えるか、一覧から選び直してください。あとは予算額と決算額を入れれば、増減と合計と次年度繰越金が出ます。年度末の通帳残高と手元現金の欄もあり、次年度繰越金と一致すると「一致」、ずれると差額の金額が表示されます。この欄が「一致」になるまで総会に出さない。決めごとはそれだけです。
総会での読み上げ順も、先に決めておくと3分で終わります。まず収入合計と支出合計。次に予算と差が大きい科目だけ。そして次年度繰越金。最後に監事の監査報告。上の計算例で読み上げる科目は、予備費のマイナス20,100円と慶弔費のマイナス10,000円の2つだけです。7つの科目を全部読む必要はありません。
会計の仕事が重いのは、1年分の出納帳をもう一度たどり直す3月だけです。日々の入力と決算が1つにつながっていれば、この月の作業はほとんど消えます。私たちが「自治会総合支援サービス」を作ったのは、そこを消したかったからです。今日やることを1つ選ぶなら、上のテンプレートを開いて、出納帳の科目別合計を決算額の列に入れるところから始めてください。
よくある質問
収支報告書と収支決算書、会計報告書は違うものですか。 呼び方が違うだけで、中身は同じです。前任者が残した去年の用紙と同じ名前に揃えてください。総会の議案書と名前が食い違うほうが混乱します。
前年度繰越金は収入に入れるのですか。 入れます。東松島市・美濃加茂市・座間市の記載例は、いずれも前年度からの繰越金を収入の科目として並べています。収入に入れないと、次年度繰越金が年度末の通帳残高と手元現金の合計に合わなくなります。
予算を決めていない自治会でも収支報告書は作れますか。 作れます。予算額の列を空けたまま、決算額だけを埋めてください。ただし総会では「予算と比べてどうだったか」を聞かれます。次の年度からは、決算額をもとにした予算書を総会に一緒に出すことを私たちはおすすめします。
決算額と通帳残高が合いません。総会は近いのですがどうすればよいですか。 合っていることを確認してから、総会に出してください。差額の金額そのものが手がかりになります。口座への預け入れと引き出しの記入漏れ、科目別合計の取りこぼし、未納分の二重計上の順に探します。原因が分かるまでは、会長に事情を伝えて日程を相談してください。
出典
- 東松島市『地区自治会ハンドブック【会計編】』令和4年度版(PDF)。14ページの決算書の記載例、監査報告の文言、監査に用意する書類。
- 座間市自治会総連合会『自治会出納帳マニュアル』(PDF)。決算書の作成(例)、収入10科目・支出12科目、決算書作成順序例。
- 美濃加茂市『自治会活動に活用できるテンプレート集』(ページ、記載例PDF)。決算書(案)記載例、予算書(案)記載例の【ポイント】。
- 福岡市『自治会・町内会各種様式集』(ページ)。決算書のほかに財産調書・積立金調書を別様式で配布。
- 地方自治法 第260条の4、第260条の11、第260条の12(e-Gov法令検索、長岡市による抜粋PDF)。認可地縁団体の財産目録と監事の職務。長岡市のPDFは2015年時点の条文。第260条の4・11・12は現行条文と一致を確認。
- 横浜市『地縁による団体の認可(自治会町内会の法人化)の手引き』令和5年4月(PDF)。3ページ「財産目録の作成」。法改正後も財産目録の作成が必要である旨。
この記事はAIが下書きし、運営者が内容を確認して公開しています。制度や手続きは自治体や団体の規約によって異なります。お住まいの市区町村で自治会を担当する窓口の手引きも、合わせて確認してください。
