4月に会計を引き受け、前年度の通帳を出納帳と1行ずつ見比べていきます。出金は12件。そのうち、帳簿に載っていない引き出しが2回、帳簿の金額より多い引き出しが1回ありました。前任の会計は同じ班の顔見知りです。電話で聞くか、会長に言うか、警察に行くほどのことか。近所づきあいも気がかりです。
最初の1週間は、問い詰めない、広めない、記録を残す。先にミスの線を消し、説明のつかない額を数字にしてから、会長と監事を含む3人で本人に聞きます。返してもらう道と処罰を求める道は別の手続きで、どちらにも期限があります。この記事は、相談に持っていく資料作りまでを受け持ちます。
私たちの目安では、気付いた日に出金を表に写し、3日以内に説明のつかない額を出します。1週間以内にコピーと経緯の記録をそろえ、会長と監事に伝える。本人に聞くのはそのあとです。
- 気付いた日通帳を記帳し、出金を突き合わせの表に写す
- 3日以内帳簿と領収書に当て、説明のつかない額を出す
- 1週間以内コピーと経緯の記録をそろえ、会長と監事に伝える
- そのあと3人で本人に聞き、紙に残す
- 説明がつかなければ相談先に資料を持っていき、総会で報告する
使い込みを疑う前に、通帳の出金を1行ずつ帳簿と領収書に当てる
最初にミスの線を消します。総務省の手引き「監査の考え方」60ページは、気になる点を2つに分けています。「勘定科目の間違い、集計ミスなど」の訂正できるミスと、「使途が不明なお金の存在、お金の紛失など」の訂正できないものです(監査の記事)。記入漏れや現金と預金の混在の直し方は出納帳の記事に任せます。
やり方は、通帳の出金1件ごとに帳簿の行と領収書を当てることです。前任者が最後に記帳したあとの出金も拾えるよう、通帳は最新まで記帳してから写します。
- 通帳を最新まで記帳する
- 出金を1行ずつ表に写す通帳の日付、通帳の摘要、出金額を写します
- 帳簿の同じ日・同じ金額の行を探す帳簿の日付、帳簿の科目・摘要、帳簿の金額を写します
- 領収書の番号を当て、判定を見る
配布する表の「突き合わせ」のシートでは、1行に出金1件を書きます。「帳簿に載っているか」と「領収書があるか」には、「はい」か「いいえ」を選びます。「判定」には、説明がつく・帳簿に無い・領収書が無い・帳簿より多い・入力待ち、のどれかが式で出ます。「帳簿に載っているか」と「領収書があるか」のどちらかが空欄の行は「入力待ち」と出て、説明がつく件数にも、説明がつかない件数と額にも入りません。入力待ちの件数が0になるまで入れます。「レシートのみ」も選べて説明がつく側に入りますが、レシートの扱いは会のルールによります。
30世帯・会費5,000円の自治会の例で見ます。出金12件のうち9件は帳簿に載り、領収書もありました。残る3件のうち、2025年6月10日の50,000円と11月20日の40,000円は「帳簿に無い」。2026年2月14日は出金60,000円に対して帳簿が30,000円で「帳簿より多い」、差は30,000円です。集計は、出金の件数12、説明がつく件数9、説明がつかない件数3、入力待ちの件数0。説明のつかない額の合計は120,000円になります。
世間で使途不明金と呼ばれるこの額を、私たちは「説明のつかない額」と呼んでいます。書き忘れも含まれうるので、使い込みと決まったわけではありません。
本人に聞く前に、コピーと経緯の記録をそろえておく
兵庫県弁護士会が一般向けに答えた法律相談の記事(神戸新聞 2025年7月16日掲載)は、事実確認として3つを挙げています。1つ目は「通帳や財産目録、収支計算書などの財務関係書類を確認」すること。2つ目は金融機関に取引履歴の開示を求めること、3つ目は関係者への聴き取りです。取引履歴を誰が頼めるかや手数料は、口座のある金融機関に確かめてください。
原本は会の物として役員の手元で保管し、コピーを取ります。確かめたこと・聞いたこと・相談したことは、その日のうちに「経緯の記録」のシートへ1行書きます。列は9つあり、日付、書いた人(役職)、したことなどを並べます。分かったこと・言われたこと、資料(コピーの有無と保管場所)、次にやることも入ります。書くのは見たことと聞いたことだけで、推測は書きません。ここまでは私たちの提案です。
同じ記事は、「私的使い込みが間違いないようでしたら」規則に基づいて経理担当者を解任するとしています。あわせて「金融機関への届け出印の変更や口座の凍結など、財産の散逸を防止」するとも書いています。その見極めと手続きは、弁護士と金融機関に確かめてから動きます。
疑いを話す範囲にも気を付けます。回覧や掲示、SNS に名前を出すのは避けてください。刑法第230条第1項は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず」処罰すると定めています。
本人の話は3人で聞き、その日のうちに紙に残す
私たちは、会長と監事を含む3人で会うことをおすすめします。規約に決まりがあれば、それに従います。1人で家を訪ねると、聞いた内容をあとで誰も確かめられません。
聞くのは説明のつかない額の行ごとです。日付と金額を示して使い道を尋ね、答えは「本人の説明(聞いたあと)」の列と経緯の記録に書きます。
経緯の記録の書き方(例)
| No | 日付 | 書いた人(役職) | したこと | 分かったこと・言われたこと | 次にやること |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 4/20 | 会計 | 書類を確かめた | 前年度の出金12件のうち3件が帳簿と合わない | 会長と監事に伝える |
| 2 | 4/22 | 会計 | 役員で話し合った | 会長・監事と表を見た。3人で前任者に聞くことにした | 日程を決める |
| 3 | 4/27 | 会長 | 本人に聞いた | 3件の使い道を聞いた。領収書を探すと言われた | 5/10までに返事をもらう |
| 4 | 5/10 | 監事 | 受け取った | 11/20の分の領収書を受け取った。残り2件は説明なし | 相談先に連絡する |
表は指で横に動かすと、右の列が見えます
この例では、5月10日に11月20日の40,000円の領収書が出ました。判定を直します。ただ、「領収書があるか」を「はい」にしただけでは、判定は「帳簿に無い」のままです。式が帳簿の列を先に見るからです。帳簿の記入漏れだったと役員で確かめ、「帳簿に載っているか」も「はい」にすると「説明がつく」に移ります。説明のつかない額は80,000円に減ります。直した理由はメモの列に残します。
3件すべてに説明がつき、ミスと分かれば、そこで終わってよいのです。
返すと言われたら、金額・返し方・期日を書面にし、本人の署名をもらいます。民法第152条第1項は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」としています。書面の文案と、それで足りるかは弁護士に見てもらってください。
返してもらう道と、告訴の道は別の手続きです
返してもらうのは民事の手続きです。兵庫県弁護士会の記事は、内容証明郵便(文面を郵便局が証明する手紙)で返還を求め、応じなければ民事訴訟、勝っても返さなければ差押え、という順を挙げています。民事訴訟法第29条は、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」はその名で訴えられるとしています。自分の会が当たるか、誰の名で訴えるかは弁護士に確かめます。
処罰を求めるのは刑事の手続きです。同じ記事も、金銭の請求(民事)と刑事を分けています。刑法第252条は、横領(預かった物を自分の物にする罪)を5年以下の拘禁刑としています。第253条は、業務として預かった物の場合を業務上横領とし、10年以下の拘禁刑としています。同じ記事の書き方は「業務上横領罪が成立する可能性」です。自治会の会計が「業務」に当たるか、罪になるかは、記事では判断しません。起訴(裁判にかけること)を決めるのは検察官です(裁判所のサイト)。
警察に出すものには告訴と被害届があります。告訴は、被害者が犯人の処罰を求めて申し出る手続きです。刑事訴訟法に定めがあり、「犯罪により害を被つた者」ができます(第230条)。「書面又は口頭で検察官又は司法警察員に」出す決まりです(第241条第1項)。法務省のページは、被害者は「犯罪事実を申告して犯人の処罰を求めて告訴することができます」としています。
被害届は犯罪の被害を届け出るものです。警察の決まりである犯罪捜査規範は国家公安委員会の規則で、法律ではありません。その第61条第1項は、警察官は届出を「受理しなければならない」としています。
返してもらう(民事)
- 相手に返還を求める
- 話し合い、内容証明、民事訴訟の順
- 勝っても返さなければ差押え
- 期限は民法の時効(3年・5年など)
処罰を求める(刑事)
- 警察に被害届や告訴を出す
- 起訴するかは検察官が決める
- お金を取り戻すための手続きとは別
- 期限は公訴時効(5年・7年)
どちらにも期限があります。刑事の側で、その罪で起訴できる期限を公訴時効と呼びます。年数と数え始めは次の表のとおりです。
| 道 | 何の期限か | 年数 | いつから数えるか | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 刑事 | 業務上横領の公訴時効 | 7年 | 犯罪行為が終わった時 | 刑事訴訟法 第250条第2項第4号、第253条第1項 |
| 刑事 | 横領の公訴時効 | 5年 | 犯罪行為が終わった時 | 刑事訴訟法 第250条第2項第5号、第253条第1項 |
| 民事 | 損害賠償(不法行為) | 3年 / 20年 | 損害と相手を知った時 / 不法行為の時 | 民法 第724条 |
| 民事 | 債権 | 5年 / 10年 | 行使できると知った時 / 行使できる時 | 民法 第166条第1項 |
| 民事 | 本人が認めたとき | 数え直す | 承認の時 | 民法 第152条第1項 |
「不法行為」は、違法に他人へ損害を与えることです。出典: e-Gov 法令検索(刑法、刑事訴訟法、民法)。どの行が当てはまり、いつから数えるかは事案によります。どちらの道を選ぶかも含め、会で決める前に弁護士に確かめてください。
相談先は4つ。法テラスの電話は窓口の案内で、無料相談の制度は個人向けです
法テラス、警察、弁護士会、市区町村は、役割が違います。
| 相談先 | してくれること | 自治会として使うときの注意 |
|---|---|---|
| 法テラス・サポートダイヤル 0570-078374 | 制度と手続きの紹介、相談窓口の案内。平日9〜21時、土曜9〜17時 | 個別の法律相談や法的判断はしない。利用は無料、通話料はかかる |
| 法テラスの民事法律扶助 | 無料の法律相談、弁護士費用の立替 | 「法人・組合等の団体は対象者に含まれません」 |
| 警察相談専用電話 #9110 | 相談内容に応じた窓口の案内 | 通常の電話料金。警察署でも相談できる |
| 弁護士会の法律相談 | 個別の法律相談、返還請求や告訴の依頼 | 料金と予約は各弁護士会で確かめる |
| 市区町村の自治会担当の窓口 | 自治会の運営の相談、市の法律相談の案内 | 窓口の名前と、法律相談の有無は市によって違う |
出典: 法テラス(2026年9月30日確認)、警視庁。
法テラスのサポートダイヤルは「オペレーターは個別の法律相談や法的判断を行うことはできません」とされています。自治会としては、弁護士会か市の窓口の相談を当たります。
持っていくのは、突き合わせと経緯の記録の印刷、通帳・帳簿・領収書のコピー、規約です(私たちの提案)。
会員への報告は、確かめた事実と金額だけを総会で
総務省の手引き60ページは、使途が不明なお金などは事実関係を調べ、総会で会員に報告し、改善方法を話し合うとしています。信頼を損ねる処理なら、年度途中の臨時総会も挙げています。法人の自治会(認可地縁団体)の監事は、法令や規約への違反などを認めたら総会に報告します。必要なら総会を招集します(地方自治法第260条の12)。
報告するのは、確かめた事実、説明のつかない額、今後の対応の3つと私たちは考えています。例なら、説明のつかない3件・120,000円のうち1件に領収書が出て、残りは80,000円です。名前を出すかは弁護士と相談してから決めます。臨時総会の資料は総会資料の記事、記録の残し方は議事録の記事に書きました。
来年度からは、一人でお金を出し入れできない形にする
総務省の手引き「コミュニティ団体の運営とお金の管理」7ページに、こうあります。「例えば、1人の会計役員が通帳と印鑑を保管し、他の役員の承認が不要で自由にお金を引き出すことができ、しかも記録を全く残していないとしたら、たとえきちんと管理していても、他の人にはそのことが分かりません。」6ページは「通帳と印鑑は別の人が管理する」としています。
『函館市町会運営標準マニュアル』21ページは、口座名義を個人名だけにしないよう求め、「キャッシュカードは,できるだけ作らない」とも書いています。22ページは「立替払は原則禁止」とし、前渡しでも上限などを先に決めておくのがよいとしています。兵庫県弁護士会の記事も「経理担当者を複数選任したり、日常的にダブルチェックをしたり」を挙げています。
私たちからは1つ足します。月に1回、会計が通帳の最新ページのコピーを会長に渡すことです。会長は帳簿の月末の残高と見比べるだけで足ります。
通帳と印鑑の分け方は引き継ぎの記事に書きました。
自治会_使途不明金の調べ表.xlsxシートは「使い方」「突き合わせ」「経緯の記録」の3枚。罪になるかどうかや時効は判断しません。役員の中で使う資料で、回覧や掲示には使わないでくださいテンプレートをダウンロード今週は、前年度の通帳を最新まで記帳し、出金を「突き合わせ」に1行ずつ写すところまで進めてください。
よくある質問
本人がお金を返してくれたら、警察に届けなくてもよいですか。 届けるかどうかは会で決めることで、この記事では決めません。返してもらう道と処罰を求める道は別の手続きです。役員だけで済ませず総会に報告し(総務省の手引き)、決める前に弁護士に相談してください。
会長が使い込んでいるようです。誰に言えばよいですか。 私たちは、突き合わせの表と経緯の記録を監事と副会長に見せて伝えることをおすすめします。規約に定めがあれば、それに従います。法人の自治会なら、監事は規約違反などを認めたら総会に報告します(地方自治法第260条の12)。
法テラスに電話すれば、自治会として無料で相談できますか。 サポートダイヤル(0570-078374)は制度と窓口の案内で、個別の法律相談はしません。無料の法律相談がある民事法律扶助は「法人・組合等の団体は対象者に含まれません」。弁護士会や市区町村の相談を確かめてください。
会計を引き受けた自分が、あとで疑われないためには何をすればよいですか。 総務省の手引きは、1人の会計が通帳と印鑑を持ち、記録を残していなければ、きちんと管理していても他の人には分からないと書いています。通帳と印鑑を別の人が持ち、引き継ぎの日に通帳残高・手元現金・次年度繰越金を並べて確かめておきます。
出典
- 兵庫県弁護士会「くらしの法律相談」2025年7月16日
- 法令は e-Gov 法令検索: 刑法、刑事訴訟法、犯罪捜査規範、民法、民事訴訟法、地方自治法
- 総務省「コミュニティ団体の運営とお金の管理」 6〜7ページ
- 総務省「監査の考え方」 60ページ
- 函館市『函館市町会運営標準マニュアル』 21〜22ページ
- 法テラス「お電話でのお問合せ」
- 法テラス「民事法律扶助業務」
- 警視庁「警察相談ダイヤル#9110」
- 法務省「被害者支援」、裁判所「起訴・不起訴の決定」
この記事はAIが下書きし、運営者が内容を確認して公開しています。制度や手続きは自治体や団体の規約によって異なります。