5月の集金で、班長さんが2月に越してきた世帯を訪ねました。玄関先で返ってきた一言は「自治会は任意でしょう。最高裁の判例で、払わなくていいと出ていますよ」でした。班長さんはその場で答えられず、会計に「なんと答えればいいか」と電話をかけてきます。その世帯が加入届を出しているかは、名簿を開かないと分かりません。役員会の意見も、「規約で決めたのだから払ってもらうべきだ」と「任意なら仕方ない」の2つに割れています。

自治会費の支払い義務は、加入しているかで分かれます。 最高裁は2005年4月26日の判決で、退会を制限する規約の無い自治会の会員は、いつでも退会できるとしました。退会後の会費の義務は否定し、退会するまでの3か月分の自治会費の支払い義務は認めています。自治会に入っていない世帯には会費をお願いせず、入っている会員には規約で決めた会費をお願いできます。

この記事では、30世帯・年会費5,000円の自治会を例にします。法人(認可地縁団体)ではなく、会費に募金は入っていない会です。冒頭の場面も、この会の設定です。

お断りしておくと、私たちは自治会の会計をクラウドで扱う道具を作っている会社で、法律の専門家ではありません。判決と法律は裁判所とe-Govの原文から引き、ほかの判決は出典を明示した資料の要約によります。自分の会に当てはめた判断が要るときは、専門の相談先に委ねてください。

「判例で払わなくていい」と言われたら、先に相手が4つのどれかを聞き分ける

「払わなくていい」と言う人の立場は、私たちの整理では4つに分かれます。どれに当たるかで、答えられることが変わります。

最初に開くのは名簿です。加入届が無ければ1つ目、あれば2つ目か3つ目に進みます。

最高裁が認めたのは「いつでもやめられる」こと。入っていた間の会費まで消えたわけではありません

玄関先で言われる「最高裁の判例」として、私たちがまず思い当たるのは、2005年4月26日の最高裁判所第三小法廷の判決です。県営住宅の自治会が、退会を申し入れた会員に共益費と自治会費を求めた事件でした。裁判所のページにある判示事項(判決の要点)は、次のとおりです。

「権利能力のない社団である県営住宅の自治会の会員がいつでも当該自治会に対する一方的意思表示により退会することができるとされた事例」

権利能力のない社団とは、法人ではないものの、団体として活動している会のことです。判決は、この自治会を「いわゆる強制加入団体でもなく、その規約において会員の退会を制限する規定を設けていない」と見ました。そのうえで、会員は「いつでも」一方的に退会できると判断しています。

自治会費は月300円で、払っていなかったのは24か月分7,200円でした。退会を申し入れた月までの3か月分900円(300円×3)は支払い義務あり。その翌月からの21か月分6,300円(300円×21)は支払い義務なしです。共益費は、退会が有効でも無効でも支払い義務が残るとされました。事件の事実と数字の表は、未納の記事のうち判決を扱う節に載せています。

この判決から読めないことが2つあります。1つは「入っている間の会費も払わなくてよい」です。判決はむしろ、退会までの分の支払い義務を認めました。もう1つは「どの自治会でも同じ結論になる」です。退会を制限する規約が無い、1つの自治会の事件についての判断です。

加入している会員については、市の手引きがはっきり書いています。福井市の『自治会ガイドブック』は「自治会に加入している会員は、自治会の規約(会則)等で定められている会費を納入する義務が生じます」とします(p.3)。やめる自由と、入っている間の会費は別の話です。

判例と国・市の資料を1枚に並べました。

自治会費の義務について資料が言っていること

資料誰について書いてあること役員が言えること出典の箇所
最高裁 2005年4月26日判決加入していた会員が退会を申し入れた退会を制限する規約が無ければ、いつでも一方的に退会できる。退会を申し入れた月までの3か月分は支払い義務あり、退会後は無しやめる人は止めない。入っていた間の分はお願いできる(その事件では)判示事項、判決文
大阪高裁 2007年8月24日判決(最高裁 2008年4月3日に上告を退けて確定)会費に募金2,000円を上乗せした決議募金は「すべて任意に行われるべきもの」。事実上強制すると思想・信条の自由の問題が生じ得る。決議は無効募金を会費に混ぜて一律に集めない総務省サイト掲載の教材 p.9
国交省 標準管理規約コメント 第27条関係③マンションの管理組合が自治会費を一緒に集める場合自治会費は任意に負担するもの。加入を希望しない者から徴収しない。区分経理管理費と一緒でも、自治会に入っていない世帯からは集めないコメント p.21
地方自治法 第260条の2第7項法人の自治会(認可地縁団体)正当な理由が無い限り、区域に住む個人の加入を拒めない入りたい人は断れない(法人の会)e-Gov
福井市『自治会ガイドブック』加入している会員/していない人加入している会員は規約の会費を納める義務。していない人には強制できない。退会を認めないことはできない入っている会員にはお願いできるp.3・p.5

表は指で横に動かすと、右の列が見えます

出典: 最高裁判所 平成17年4月26日判決、総務省サイト掲載の教材『法教育の視点から ルールづくり』(大阪高裁判決の要約。判決原文は未確認)、国土交通省『マンション標準管理規約(単棟型)コメント』令和7年10月17日改正、地方自治法(e-Gov法令検索)、福井市『自治会ガイドブック』令和8年版。どれも1つの事件か1つの資料の判断で、規約や事情が違えば結論は変わり得ます

入っていない世帯にはお願いしない。やめたいと言われたら、退会届を受け取って日付を残す

例の会の世帯が加入届を出していなければ、会費をお願いする相手ではありません。福井市のガイドブックは、加入していない人に会費の納入を強制できないとしています(p.5)。渡すのは加入の案内で、入るかどうかは本人が決めます。

やめたいと言われたときも、引き止めません。同じページには「退会を認めないことはできません」とあります。射水市の規約例も第8条の解説で「退会について、本人の意思に制約を加えることは認められません」としています(p.18)。

退会届を受け取ったら、届の日と退会日を記録し、その年度の会費の扱いを規約の会費の条で確かめます。退会日を過ぎたら名簿と集金簿から外し、次の年度の案内は送りません。

退会の申し出を受けたら4段
  1. 引き止めずに退会届を受け取る
    福井市のガイドブック p.5、射水市の規約例 第8条の解説のとおりです
  2. 退会届の日と退会日を記録する
  3. その年度の会費の扱いを規約の会費の条で確かめる
    定めが無ければ役員会で決めます
  4. 名簿と集金簿から外し、次の年度の案内を送らない

法人の自治会(認可地縁団体)には、もう1つ決まりがあります。地方自治法第260条の2第7項は「正当な理由がない限り、その区域に住所を有する個人の加入を拒んではならない。」と定めます。一方で、住民に加入や会費の支払いを義務づける条文は、第260条の2〜第260条の49に見当たりません(e-Govで確かめました)。自分の会が法人かどうかは、認可地縁団体の記事で見分けられます。

迷いやすいのが、退会した年度の会費です。例の会のように年額で一括に集める会では、年度の途中で退会したときの扱いが規約に無いこともあります。この点を決めた一次情報を、私たちは見つけられていません。

ここからは私たちの読みです。規約に「月割り」の定めがある会なら、4月始まりの年度で6月に退会した世帯は、5,000円÷12×3か月(4〜6月)=1,250円です。定めが無ければ、役員会で扱いを決めて議事録に残します。

会費に募金を混ぜていると、そこが争点になります。大阪高裁は上乗せの決議を無効としました

入っている会員が「払いたくない」と言うとき、会費の中身が問われることがあります。その例が、滋賀県甲賀市の自治会の事件です。以下は総務省サイト掲載の教材「法教育の視点から ルールづくり」の要約です。

約940世帯のこの自治会は、集める組長らの負担を理由に、2006年3月の定期総会で決議をしました。年会費6,000円に赤い羽根などの募金や寄付金の分2,000円を上乗せし、8,000円にする内容です(p.2)。反対した会員が、決議の無効の確認を求めて訴えました。

二審の大阪高裁(2007年8月24日)は、教材が括弧で引く判決の言葉で、募金や寄付金は「すべて任意に行われるべきもの」としました。「その支払を事実上強制するような場合には、思想、信条の自由の侵害の問題が生じ得る」ともしています。最高裁は2008年4月3日に上告を退け、決議を無効とした判断が確定しました(p.9)。

教材は、この自治会で未加入の世帯がごみステーションを使えないなど、脱退の自由が事実上制限されていたとも書いています(p.9)。

一宮市の『町内会 会計事務の手引』も、募金を「それぞれの趣旨に賛同する人が自由に行うもの」とします(p.9)。会費と一緒に集めるなら、総会などで方針を決めるよう書いています。

募金を別に預かる例の会でも、予算書は一度開いておきます。支出の部に募金や寄付の科目があり、元手が会費なら、玄関先の「払わない」はそこを指しているのかもしれません。使い道の答え方は使い道の記事に、募金や神社の帳簿上の扱いは同じ記事のQ&Aの節にまとめました。

マンションで管理費と一緒に引かれているなら、話す相手は管理組合です

マンションでは、管理組合が管理費と一緒に自治会費を集めていることがあります。国土交通省の『マンション標準管理規約(単棟型)コメント』(2025年10月17日改正)は、管理組合を「区分所有者全員で構成される強制加入の団体」、自治会を「居住者が任意加入する地縁団体」とし、両者は「異なる性格の団体」だと書いています(第27条関係③、p.21)。区分所有者とは、部屋の持ち主のことです。

同じ箇所は自治会費を「地域住民相互の親睦や福祉、助け合い等を図るために居住者が任意に負担するもの」とします。マンションを維持・管理していくための費用である管理費等とは「別のもの」です。一体で集めている場合の留意点として、コメントは次の4つを挙げます。

  • ア 自治会への加入を強制するものとならないようにする
  • イ 加入を希望しない者から自治会費の徴収を行わない
  • ウ 自治会費を管理費とは区分経理する
  • エ 管理組合による代行徴収に係る負担について整理する

区分経理とは、お金の出入りの帳簿を管理費と自治会費で分けることです。

2016年の改正では、管理費の使い道と管理組合の業務から「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」の文言を削りました。管理組合と自治会の混同で「自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例」などが生じていたためです(第27条関係②、p.20)。

管理費と一緒に引き落とす仕組みは管理組合のもので、自治会の側だけでは変えられません。話す相手は管理組合の理事会です。

自治会の側では、2つを確かめることを私たちは提案します。入っている世帯を名簿で数えることと、管理組合から受け取る自治会費がその数と合っているかです。管理組合の会計との数え方の違いは管理組合の会計の記事に書きました。

管理費と自治会費

管理費

  • 管理組合が集める
  • 区分所有者全員の強制加入の団体
  • マンションを維持・管理していくための費用

自治会費

  • 自治会の会費
  • 居住者が任意に加入する団体
  • 親睦や助け合いのために任意に負担する
  • 一緒に集めるなら区分経理し、加入を希望しない人からは徴収しない

玄関先では判例を持ち出さない。4つの場面の言い方

玄関先で判例の話になると、お互いに引けなくなります。私たちは、役員の側から判例を持ち出さないことをすすめます。言うのは、自分の会の規約と、加入しているかどうかの事実だけで足ります。

下は私たちの文例です。Excelの「言い方(印刷用)」シートに同じ文が入っていて、A4で印刷して班長さんに渡せます。

① 入っていない世帯に

加入はご本人の自由です。入っていない方に会費をお願いすることはありません。入るかどうかは、活動の案内を読んでから決めていただけます。

② やめたいと言われたら

退会のお申し出として承ります。退会届に日付を書いていただけますか。その月までの会費の扱いは、規約を確かめてからご連絡します。

③ 入っているが、払いたくないと言われたら

入っている方には、規約で決めた会費をお願いしています。何に使っているかは、予算書でご説明します。募金は会費とは別で、出すかどうかは自由です。

会費に募金が入っている会では、③の最後の1文はそのまま使えません。福井市のガイドブックも「まずは、その世帯が会費を納入しない理由を確認することが必要です」と書いています(p.3)。話を聞いても払われないままなら、お願いの手紙に進みます。

④ マンションで管理費と一緒に引かれている世帯に

自治会費の分は、管理組合が代わりに集めています。自治会に入らない場合の扱いは、管理組合の理事会とご相談ください。自治会の名簿もこちらで確かめます。

どの場面でも言わない言葉が4つあります。「判例で払う義務がある」「払わないとごみが出せない」「名前を回覧に出す」「法的措置」です。ごみ置き場と名前の理由は未納の記事の節に、払わない会員を外す条を急いで作らない理由は同じ記事の滞納の節に書きました。

市役所に払うよう言ってもらうこともできません。総務省の行政相談の回答は、自治会について「行政機関による指導や監督はできません」としています。会費の相談も、原則として自治会内で話し合って解決するよう案内しています。

「入っている方には規約の会費を」と言えるのは、誰がいつ払ったかを、会計が帳簿で示せるときです。

来年の集金の案内に「加入は自由、入っている間は規約の会費」と1行入れる

玄関先で聞かれる前に、集金の案内で伝えておく手があります。次の1行は、これも私たちの文例です。

自治会への加入は自由です。加入している世帯には、規約第6条で決めた年会費5,000円をお願いしています。募金は会費とは別にお預かりし、出すかどうかは自由です。

途中で入退会したときの会費の定めが規約に無ければ、次の総会で足すかを役員会で話し合います。条文の置き方は規約例の記事、変える手順は規約改正の記事にあります。世帯が減る年の試算は会費の金額の記事、集金簿の列の足し方は集金方法の記事にあります。

加入と退会を1世帯1行で残すExcelを作りました。「規約の確かめ」には、会費の額と単位、退会の条、途中で入退会したときの定め、会計年度の始まりの月を写します。手順は「使い方」の「何をする」、入れるセルは「どこに入れる」の列にあります。

「加入と退会の記録」には、世帯を「2班-08」のように班と番号で書きます。日付を入れると、「今の状況」「退会した年度に在籍した月数」「退会した年度の会費の目安」「確かめ」の欄が自動で埋まります。規約に途中の定めが無ければ、目安の欄には「役員会で決める」と出ます。

右側の「加入の世帯数」と「今年お願いする会費の合計」は、集金簿と合わせる数です。世帯名と事情を書く表なので役員の中だけで使い、保存時はパスワードを設定してください。

自治会_加入と退会の記録.xlsx の見本。1 枚目のシートの上部自治会_加入と退会の記録.xlsx空のファイルです。マクロなし、シートは4枚(使い方 / 規約の確かめ / 加入と退会の記録 / 言い方(印刷用))。入力するのは色の付いたセルだけです。シートは保護してあります(パスワードなし)。テンプレートをダウンロード
自治会_加入と退会の記録_記入例.xlsx の見本。1 枚目のシートの上部自治会_加入と退会の記録_記入例.xlsx例の会(年会費5,000円、法人ではない)の規約を入れたファイルです。見本の画像は「加入と退会の記録」のシートで、説明のための4行だけを入れています。30世帯分ではないので、「今年お願いする会費の合計」は加入の2世帯分の10,000円です。テンプレートをダウンロード

今週やることは1つです。名簿を開き、加入届の無い世帯に印を付けてください。玄関先で何を言うかは、その印で決まります。

よくある質問

自治会に入っていなくても、会費を払う義務はありますか。 福井市のガイドブックは、加入していない人には会費の納入を強制できないとしています(p.5)。加入している会員には、規約で決めた会費を納める義務があるとしています(p.3)。

年度の途中で退会したら、その年の会費は返しますか。 規約の会費の条しだいです。定めが無ければ役員会で決めて議事録に残し、次の総会で規約に足すかを話し合います。

規約で「全世帯加入」と決めれば、全員から集められますか。 その効力を判断した一次情報は確かめていません。福井市のガイドブックは、加入していない人には強制できないとしています。

赤い羽根の募金を自治会費と一緒に集めてもよいですか。 会費に上乗せして一律に集めた決議を、大阪高裁が無効とした例があります(総務省サイト掲載の教材の要約)。私たちは、募金を別に預かることをすすめます。

法人の自治会は、入りたい人を断れますか。 正当な理由が無い限り、断れません。地方自治法第260条の2第7項が定めています。

出典

下の資料は、どれも2026年11月5日に開いて確かめました。

  • 最高裁判所第三小法廷 平成17年4月26日判決(平成16年(受)第1742号 自治会費等請求事件、集民第216号639頁)(裁判例の詳細ページ、判決文 PDF)。判示事項、事実と判断。
  • 国土交通省『マンション標準管理規約(単棟型)』及び同コメント 令和7年10月17日改正(PDF)。コメント第27条関係②(p.20)・③(p.21)。
  • 地方自治法(e-Gov 法令検索)。第260条の2第7項(認可地縁団体の第260条の2〜第260条の49を確かめました)。
  • 総務省サイト掲載の教材「法教育の視点から ルールづくり」(教材7)(PDF)。p.1〜2 事例、p.9 資料10「実際の判決」。大阪高裁判決の原文は確かめていません。
  • 福井市自治会連合会・福井市地域振興課『自治会ガイドブック』令和8年版(PDF)。p.3・p.5。
  • 射水市『規約例及び様式集』○○○自治会規約(例)(PDF)。第8条と解説(p.18)。
  • 一宮市総合政策部市民協働課『町内会 会計事務の手引』2026年4月1日発行(PDF)。p.9 会計処理Q&A。
  • 総務省 行政相談の回答「自治会は住民主体の組織です」2026年6月1日 日本海新聞掲載(PDF)。

この記事はAIが下書きし、運営者が内容を確認して公開しています。制度や手続きは自治体や団体の規約によって異なります。