4月に会長を引き受け、前任者から段ボール箱を受け取りました。中の会則は1枚きりで、条文は7つ。会計年度も、監事も、総会を欠席するときの委任も書いてありません。総会では「会則が古いので作り直してほしい」と意見が出て、来年4月の総会に新しい規約を出すことになりました。市のホームページで「規約例」を探すと、PDFとWordが何種類も出てきます。どれを使い、どこを自分の会に合わせればよいのか。
規約に、法律で決まった書式はありません。市の規約例を1つ下敷きにし、空欄と選ぶ所だけを自分の会に合わせれば、下書きは1部できます。会費の金額のように変わりやすいことは本文に書かず、総会の議決や細則に回します。空欄を埋めると条文が組み上がるExcelの下書き表も、3つ目の節で配ります。
私たちは自治会の会計の道具を作っている会社で、弁護士ではありません。この記事は、市の規約例と地方自治法の条文を並べて読んだものです。
規約に決まった書式はありません。市の規約例を1つ選んで下敷きにします
燕市の『自治会の手引き』は、p.5で「法令などにより規約や会則を作ることが義務付けられているわけではありません」と書いています。自治会は、住民の自由意志で作る任意団体だからです。同じページは、ルールを明文化しておけば新しく入る人に会のことを説明でき、役員も安心して活動できる、と続けます。
呼び名も自由です。規約の名称に特に制約はない、と北秋田市の規約例は冒頭の解説で述べています。所沢市のマニュアルも「規約(会則)」と並べて書きます。規約例そのものも決まりではありません。所沢市は作成例に「ここに示す規約はあくまでも参考です」と添えています。
下敷きは、自分の市の規約例が1つあれば足ります。市の窓口に相談するとき、同じ紙を見ながら話せるからです。これは私たちの提案です。法人にする予定があるなら、市が法人向けに出している規約例を選びます。
市町村長の認可を受けて法人になった自治会を、認可地縁団体(にんかちえんだんたい)と呼びます。地方自治法第260条の2第3項は「規約には、次に掲げる事項が定められていなければならない」とし、8つの項目を挙げます。目的・名称・区域・主たる事務所の所在地・構成員の資格・代表者・会議・資産です。これは法人にする場合の決まりで、法人でない自治会に、規約の項目を決めた法律はありません。
法人でない自治会
- 規約を作るかどうかも会で決める(燕市)
- 書く項目も会で決める
- 下敷きは自分の市の規約例
法人にする予定の自治会
- 規約に外せない項目が8つある(地方自治法第260条の2)
- 会員は区域に住む個人
- 下敷きは認可地縁団体用の規約例
市の規約例を4つ並べると、違うのは会費・任期・議長の1票・規約を変える割合
北秋田市・所沢市・神戸市の2例を、条文の番号つきで並べました。北秋田市は法人向けの例で、所沢市と神戸市は法人に限らない例です。
市の規約例で違う所
| 決めること | 北秋田市(法人向け) | 所沢市 | 神戸市 例1 | 神戸市 例2 |
|---|---|---|---|---|
| 会員 | 区域に住所を有する個人(第5条) | 区域に住所を有する個人及び団体(第6条) | 正会員(地区内居住者)と賛助会員(第5条) | 地区に居住する個人の全て(第4条) |
| 会費 | 総会で別に定める(第6条) | 総会で別に定める。金額は別紙2(第7条) | 額は総会で決め、班長が年6回集める(第7条) | 本文に月額△△円(第19条) |
| 役員の任期 | ○年(第13条) | ○年(第14条) | 2年(第10条) | 1年(第10条) |
| 通常総会の時期 | 決算終了後3か月以内(第17条) | 毎年1回(第19条) | 会計年度終了後2か月以内(第11条) | 毎年4月(第16条) |
| 定足数 | 総会員の2分の1以上(第20条) | 会員の2分の1以上(第23条) | 構成員の過半数。委任状は出席とみなす(第11条) | 構成人員の過半数。委任状は出席とみなす(第12条) |
| 可否同数 | 議長が決める(第21条) | 議長が決める。議長は会員として議決に加わらない(第24条) | 書いていない | 書いていない |
| 規約の変更 | 総会員の4分の3以上と市長の認可(第37条) | 総会員の○分の○以上(第32条) | 正会員総数の3分の2以上(第14条) | 全会員の3分の2以上(第25条) |
表は指で横に動かすと、右の列が見えます
可否同数の扱いは、北秋田市と所沢市で逆になっています。北秋田市の第21条の解説は、議長は自分の1票のほかに議長としての1票も使える、としています。所沢市の第24条2項は、議長は会員として議決に加わらないと書きます。どちらにするかを規約に書いておけば、総会の当日に迷いません。
この表で違っている所が、自分の会で決める所です。「決め方」の列が、下書き表でここに当たります。
下書き表の空欄は名前・区域・事務所・役員・任期・会計年度。章立ては規約例と同じ8つ
章立ては、北秋田市と所沢市の規約例に合わせました。総則・会員・役員・総会・役員会・会計・規約の変更・雑則の8章と、附則です。燕市の手引きp.6は「規約・会則に記載する内容例」に目的・事業・区域・会員・役員・会議・会費の7項目を挙げています。この7つは、すべて8章のどこかに入っています。
名称は、町や地域の名前に「町内会」「自治会」を付けます(北秋田市 第2条の解説)。区域は、町・字・地番・住居表示のように、住民にとって客観的に明らかな書き方が最も望ましいとされます(同 第3条の解説)。記入例は「○○市○○町1丁目から3丁目まで」です。
事務所は、集会所があればそこに置きます。会長の自宅に置くときについて、北秋田市の第4条の解説は「会長の個人名はつけません」としています。名前を書かなければ、会長が替わるたびに規約を直さずに済みます。法人の自治会で、会長が替わる年に要る届け出は引き継ぎ書の記事に書きました。
役員は、種類と人数を「会長1名、副会長1名、会計1名、書記1名、監事2名」のように書きます。監事は、会計と役員の仕事を確かめる役です。監事は他の役員を兼ねない、と北秋田市の例にあります(第11条2項)。同じ一文を、下書き表の役員を選ぶ条にも入れました。
任期は、北秋田市の第13条の解説が「短くて1年、長くて4年程度にするのが適当です」と書きます。法律上の決まりは無く、会で決めてよいとしています。記入例は1年。会計年度は、1月から12月か、4月から翌年3月までが一般的だと同市の第36条の解説にあります。
Wordのひな形は市のページにあります。この下書き表が引き受けるのは、空欄の意味と、第何条の番号の振り直しです。「条文の下書き」のシートは1行が1つの条で、「使うか」「決め方」「空欄に入れる言葉」を入れると、「出来上がる条文」に文が組み上がります。
入れない条を「使わない」にすると、「第何条」は詰めて振り直されます。記入例は第1条から第27条と附則で、退会の条を外すと第26条までです。「確かめ」の列は、空欄が残った行と、法人にするなら外せない項目が抜けた行に文字を出します。8項目との対応は「法人の必須項目」の列、細則に回す目安は「本文か細則か」の列にあります。
表の条文は、北秋田市・所沢市・神戸市の規約例を平易に言い換えた下書きです。法律の確認を受けた文ではありません。
自治会_規約の下書き表.xlsx本番用のファイルです。空欄は空、選ぶ所は最初の選択肢を入れてあります。空欄のまま印刷すると「○○」が入ります。シートは「使い方」「会の基本」「条文の下書き」「規約(印刷用)」の4枚。マクロなし、シートは保護してあります(パスワードなし)。テンプレートをダウンロード
自治会_規約の下書き表_記入例.xlsxこの記事の例(任期1年、総会は年度が終わって2か月以内、通知は7日前、施行日2027年4月25日)を入れたファイルです。見本の画像は「規約(印刷用)」のシートです。テンプレートをダウンロード会費の金額や慶弔のお金は、本文に書かず総会の議決と細則に回す
北秋田市の第6条の解説は、会費の徴収単位や金額は「規約本文ではなく、総会の議決事項か、または別に定める細則に移すことが適当です」としています。本文に書くと、変えるときの手続きが煩雑になるからです。
規約例は2通りに分かれます。神戸市の例2は第19条に「月額△△円」と金額を書き、慶弔は細則に回します(第24条)。北秋田市は第6条で「総会で別に定める」とし、所沢市も第7条で金額と納期限を別紙2に回しています。神戸市の例1も額は総会で決めます(第7条)。
金額を本文に書いた会は、値上げも値下げも規約の変更になります。記入例なら、総会で会員の3分の2以上が賛成する必要があります。私たちは、会費の金額は本文に書かず「総会で別に定める」と書く方をすすめます。 毎年の予算の議案で金額を決めれば、議決の条のとおり出席した会員の過半数で決められます。
細則は、規約を実施するための細かな決まりです。決め方は、北秋田市の第41条が、総会の議決を経て役員会が定め、次の総会に報告して承認を得る形です。所沢市の第35条は、役員会が定めて次の総会で承認を得る形です。所沢市の形に寄せたのが下書き表です。細則の例として、北秋田市の解説は「入会及び退会規則」「会費徴収規則」「弔慰金規則」「会計規則」を挙げています。
集め方(班長が集めるか、振込にするか)も同じです。本文に書くと、変えるたびに規約の変更が要ります。変える段取りは集金の記事にあります。
総会と会計の章は、去年の総会のやり方に合わせて言い方を選ぶ
総会の章は、新しい言い方を考えるより、去年の総会で実際にやった形を書く方が揉めにくいと私たちは考えています。去年の議事録を開き、委任状や書面表決書を出席に数えたか、議長を誰が務めたかを見てから選びます。
定足数は、北秋田市(第20条)と所沢市(第23条)が会員の2分の1以上、神戸市の2例が過半数です。会員が30人なら、2分の1以上は15人、過半数は16人です。1人違うので、去年数えた方に合わせます。
欠席する会員について、北秋田市の第23条と所沢市の第25条は同じ形です。あらかじめ知らせた議題について書面で表決するか、他の会員に表決を任せることを認め、その会員を出席したものとみなします。選べるのは「書面表決と委任状の両方」と「委任状だけ」です。2つの紙の違いは総会資料の記事にあります。
議長は、北秋田市の第19条の解説によれば「会長がこれに当たる」と定めることもできます。選択肢は「出席した会員の中から選ぶ」と「会長が務める」の2つです。議決の条は「可否同数のときは議長が決める」までなので、議長が会員として先に1票入れるかは、印刷した原案に書き足して役員会で決めてください。
法人の自治会は、総会の通知を少なくとも5日前までに出します(地方自治法第260条の15)。記入例は7日前です。法人を「はい」にして5日より短くすると、「確かめ」の列が知らせます。
会計の章には、予算が総会で決まるまで前年度の予算を基準に収入と支出ができる、という一文を入れておきます(北秋田市 第34条2項、所沢市 第29条2項)。4月1日から総会の日までに支払うときのよりどころになります。決算は、監事の監査を受けて総会の承認を得ます(北秋田市 第35条、所沢市 第30条)。決算書の形は収支報告書の記事で説明しています。
法人にする予定なら、会員は個人で書き、規約の変更は4分の3と市の認可
地方自治法第260条の2第2項第3号は、区域に住所を有するすべての個人が構成員になれることを、認可の要件にしています。北秋田市の第5条の解説も「法人化のための規約では、法令により加入は個人単位とします」と書きます。年齢・性別・国籍を、会員の資格に加えることもできません(同解説)。
世帯で1票にできる事項はあります。事業報告と決算、事業計画と予算、役員の選出など通常の事項は、世帯で1票にできます(北秋田市 第22条)。規約の変更、財産の処分、解散はその「通常の事項」に当たらない、と解説にあります。
規約の変更には、総構成員の4分の3以上に同意してもらう必要があります(第260条の3第1項。規約に別段の定めがあれば別)。さらに市町村長の認可を受けて、はじめて効力が生じます(同第2項)。市役所の担当者に変更箇所の審査を受けてから総会に出すよう、北秋田市の第37条の解説は求めています。4分の3を下げることには慎重であるべきだ、とも書いています。下書き表の規約の変更の条には、法人を「はい」にすると認可の項が出ます。
下書き表に無い条もあります。解散、解散のときの財産、財産の処分、事務所に備える帳簿、世帯で1票とする事項の5つです。法人にするなら、これらを北秋田市の規約例から足し、市の窓口で事前に見てもらってください。財産目録を設立時と毎年度初めの3か月以内に作ることも、北秋田市の解説に書かれています。法人になる手続きそのものは、この記事では扱いません。
役員会で原案を決め、総会の議決で古い会則と入れ替える
所沢市のマニュアルは、自治会を作る流れの最初に、設立準備会で名称・区域・組織・活動を検討し「規約の案を作成する」段を置いています。作り直しなら、この役は役員会が担えます。所沢市は、規約は「大多数の会員の納得のいく内容が定められていることが基本です」とも書きます。
- 役員会で下書き表を見ながら、決め方と空欄を決める
- 原案を印刷し、法人にする予定なら市の窓口に見てもらう
- 総会の案内と一緒に、新しい規約の案を会員に配る
- 総会で議決し、議事録に賛成の数を残す
- 附則の施行日から新しい規約を使う写しを会員に配り、原本を保管します
議決に要る賛成の数は、今の会則にある「規約の変更」の条に従うのが筋だと私たちは考えます。作り直しは、今の会則を丸ごと変えることだからです。今の会則にその条が無いときの扱いは、一次情報で確かめられていません。どの数で決めるかを役員会で先に決めておき、法人なら市の窓口に相談してください。
附則には、施行日と古い会則の廃止を書きます。例えば北秋田市は附則2で「この規約の施行と同時に○○○自治会規約は、廃止する。」とし、所沢市も附則2で旧規約を廃止しています。「会の基本」に古い会則の名前を入れると、附則の2項に廃止の一文が出ます。施行日は総会で議決した日より前にせず、記入例では2027年4月25日にしました。
議決したら、出席の内訳と賛否の数を議事録に残します。数の取り方は議事録の記事にあります。
市への届けは市によって違います。所沢市は、設立届の様式で自治会規約の写しを「参考提出書類」(任意提出)としています。届けが要るかは担当課に確かめてください。
最初の一歩は小さくて構いません。まず下書き表の「会の基本」に会の名前を入れ、「規約(印刷用)」を1部印刷して、次の役員会に持っていきます。「○○」が残った紙でも、何を決めればよいかは役員全員に見えます。
よくある質問
規約が無い自治会でも、活動を続けてよいですか。 法人でない自治会は、法令で規約を作ることを義務づけられていません(燕市の手引き p.5)。ただ、会費や役員の決め方を説明するよりどころが無いままになります。私たちは、作り直しを頼まれた年に1から作ることをすすめます。法人になるには、規約を定めていることが認可の要件の1つです(地方自治法第260条の2第2項第4号)。
規約と会則は、何が違いますか。 呼び名の違いです。規約の名称に特に制約はない、と北秋田市の規約例はしています。所沢市のマニュアルも「規約(会則)」と並べて書いています。
作った規約は市役所に届ける必要がありますか。 市によって違います。所沢市の設立届の様式では、規約の写しは任意提出です。法人(認可地縁団体)は、規約を変えると市町村長の認可が要ります(地方自治法第260条の3第2項)。市の担当課に確かめてください。
会員を世帯で書いてもよいですか。 法人でない自治会は、規約で決めます。法人にする予定なら、会員は区域に住む個人で書きます(地方自治法第260条の2第2項第3号、北秋田市の規約例 第5条の解説)。法人を「はい」にして会員を「世帯」にすると、下書き表の「確かめ」の列が知らせます。
出典
- 地方自治法(e-Gov 法令検索)。第260条の2第2項・第3項、第260条の3、第260条の15。2026年10月12日に確認。
- 北秋田市生活課『北秋田市 認可地縁団体用 自治会 規約例(解説つき)』(PDF)。条文と解説、附則。
- 所沢市自治連合会・所沢市『自治会・町内会運営マニュアル』(PDF)。設立までの流れ(PDF 6〜7枚目)、設立届(PDF 8枚目)、規約(会則)の作成例(PDF 9〜15枚目)。
- 燕市『自治会の手引き 令和8年度版』(PDF)。規約・会則(p.5〜6)。
- 神戸市『2 自治会規約(会則)』規約例1・2(PDF)。
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